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悩みを抱える人々に、光明です。 [読書]

人生相談や悩み事相談というのは、テレビや雑誌でも、人気コーナーの1つだ。

他人の悩みは、どこかしら私たちにも共通するところがあり、感情移入しやすい。それに、他人の悩みを見聞きするというのは、少し悪趣味だが、他人の不幸は何とかの味とやらで、我々の関心を誘う覗き見的要素がある。


そんな人気の相談コーナーの1つである、朝日新聞の「悩みのるつぼ」。回答者の一角をしめる、岡田斗司夫さんの回答が、注目を集めている。

その岡田さんの回答と、どのようにして回答に至ったのかのプロセス、問題を考えるための思考ツールなどを紹介して、いま話題になっているのが、この本だ。

オタクの息子に悩んでます 朝日新聞「悩みのるつぼ」より (幻冬舎新書)


オタクの息子に悩んでます 朝日新聞「悩みのるつぼ」より (幻冬舎新書)

オタクの息子に悩んでます 朝日新聞「悩みのるつぼ」より (幻冬舎新書)

  • 作者: 岡田 斗司夫 FREEex
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2012/09/28
  • メディア: 新書


最近読んだ本の中でも、かなり面白かった。

そもそも、私は“相談事”は好きだが、しかし心の片隅では、「どうせ、くだらない内容で悩んでいるんだろう」と、どこか見下げた思いを持っていた。

自分自身だって色々と悩んだことがあるのに、他人の悩みには鈍感になってしまう、あまり良くない態度だな。

ともかく、本書の良さの評判は届いていたのだが、かと言って強い関心があるわけでもなかった。悩み相談で、いくら良い本だと言われても、買うほどではない。しかし、暇つぶしに覗く程度には興味がある。私にとってワイドショーとか週刊誌は、1人で定食屋に入った時や銀行の待ち時間に見る程度の暇つぶしでしかないのだが(失礼だが)、本書の位置づけも同様だった。

ということで、暇な時間に立ち寄った書店で何気なく開いた本の1冊が、本書だったのだが・・・。

まえがきに書いてある、女子高生の相談と、それに対する回答。これを読んで、私は本書を即効で買ってしまった。

そこに書いてあった悩みは、「父親が大嫌いです」という、思春期にありがちな、正直にいうと、ちょっと下らないと思ってしまうような相談だった。それに対しての岡田氏の回答が、秀逸である。

「こんな回答、想像もできない」ということは、ない。
そのような内容を、思うことはある。

しかし、その回答の組み立て方は素晴らしいし、よくよく考えてみると、やはり発想も素晴らしい。切り口もよく、最後の一文への流れは惚れ惚れする。


さて、本書を読む前の私は、全般的に他人の悩みに鈍感であった。
それは以上の文章を読んでもらえば伝わるだろう。

誰かに相談されることも、もちろんある。
しかし、安易に、あまりに簡単に、回答を出す。小槌を振るようなものだ。はいコロリン。
ポケットの中のビスケットは、叩いて割れば数が増える。たくさんのビスケットが欲しければ、ぽんぽんぽんと、叩けばよろしい。

回答を出したこちらは気持ちがいいかもしれないが、そのほとんどの場合、相手に届いていないことが多い。

ラ・ロシュフコーはこう言っている。「およそ忠告ほど、人が気前よく与えるものはない」。他人にアドバイスをするとき、その人は、相手の悩みを解決したいという思いよりも、素晴らしい解決策を出せる自分を見せつけているだけだ。

「助言をする側は(中略)、ほとんどの場合、与える助言の中に、自分自身の利益か名声しか求めていないのである」(ラ・ロシュフコー)。
・ラ・ロシュフコーの箴言集

ラ・ロシュフコー箴言集 (岩波文庫)

ラ・ロシュフコー箴言集 (岩波文庫)

  • 作者: ラ・ロシュフコー
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1989/12/18
  • メディア: 文庫



新訳 ラ・ロシュフコー 賢者の言葉 世界一辛辣で毒気のある人生訓

新訳 ラ・ロシュフコー 賢者の言葉 世界一辛辣で毒気のある人生訓

  • 作者: ラ・ロシュフコー
  • 出版社/メーカー: 日本能率協会マネジメントセンター
  • 発売日: 2011/12/24
  • メディア: 単行本


岡田さんの回答は、まったく違う。
独りよがりの回答ではない。
相手に届く回答なのだ。

どんなに良い言葉があっても、相手に届かなければ意味がない。


なぜ相手に届くのか。答えは「愛」なのだが、この一文ではまさに“届かない”だろう。真髄は、本書を読むことでしか理解できない。

さて、本書は単なる悩み相談本ではない。

回答に至るまでの思考過程、岡田氏自身がうなり、時に悩み、どのようにして回答へと至ったかも書かれている。
また、具体的に岡田さんが使っている思考ツールも紹介されている。


正直言うと、一読後、私としては、当初思っているほどの“モノ”がなかった。つまり、期待よりは下だった。その理由は、「とはいえ所詮、本書を熟読したところで岡田氏のような回答が出せるわけではなく」という思い。よくあるノウハウ本と同じく、実際に思考ツールは使いこなせないだろう。

岡田さんだから思考ツールを使いこなせられ、岡田さんだからスッキリ回答を作り出せる。

例えば、「思考ツール:潜行」というのがある。簡単にいえば、「なぜ」を繰り返して深化させていく方法で、トヨタの「何故を5回繰り返せ」などでも有名な方法だ。これを使って、「なぜ腹が立つんだろう」を深化させるとする。本書139ページで出てくる。

これも、しっかりした人ならしっかりと思考を深めていける。抽象的な段階まで来ても、思考できる。しかし、なれていない人にとっては、抽象的思考は非常に難しい。どうどう巡りになってしまう。

「なぜ腹が立つんだろう?・・・ううん、なんでだろう・・・腹が立つということは・・・怒っている・・・なぜ怒りを感じるのだろう?・・・ええと・・・そもそも怒りとは何か・・・ん~、良いことか悪いことかで言えば・・・」適切な質問が立てられない。

思考ツールやノウハウには飽き飽きしているので、私は、「思ったよりは、大したことが書いていなかったな」と結論を出しかけた。出しかけていたのだが、レビューを書こうと本書を軽く読み直したところ、色々な新しい気づきを見つけることができた。

「おいおい、なんだこの本、2度3度読める本だったか」

私は安易なことに、この本をサラリと読み流してしまっていたのだ。


違う。

この本は、自分の、あるいは周囲の人が抱えた悩み・問題に対して、実践も伴いながら参考とするべき本だな。

この思考ツールは、一読しただけでは使いこなせないだろう。だから何度か読んだほうがいい。

そして役立つことに、ここで紹介される思考ツールは、名前を変えているけれど、色々と先端的な思考方法が取り入れられている。だから、実際の問題に対してこれらの思考ツールが展開されている本書を熟読すれば、きっと色々なところで役に立つだろう。


と、小難しいことは置いておいて、最低限なレベルとして、私は以下の点で収穫があった。

・悩みは書き出してみる。相談の大半は悩みを書いている段階で、かなり解決している(p123)(可能性がある)。シンプルでよく言われることではあるが、そのとおりだと思う。

・思考ツール「株式会社・自分(岡田)」(p128)・・・解決策がわかったからといって行動できるとは限らない。自分の中に、色々な自分がいる。会社みたいなものだという指摘には納得。会社の場合、良い方針を立てても、実行できるとは限らない。どううまく動かすかも重要だ。悩みも同様。

・思考ツール「メーター」(p153)・・・。完全解決ではなく・・・。数値化しろ、とかはよく言われるが。メーターの説明があったとき、当然だと思った。しかし、本書のほぼ終盤に掲載された悩み(p290)に、私はこの発想ができなかった。「知っている」と「できる」の違いは大きいと実感。

・思考ツール「三価値」(p183)・・・結論がない中で「今日の結論」を出す、決断のツール。「美徳」についても納得。「これからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)」のキーも理解できてお得。

これからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

これからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

  • 作者: マイケル サンデル
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2011/11/25
  • メディア: ペーパーバック



さて、本書の構成は、実際に悩みを見つつ、思考ツールも紹介しながら回答の作成過程を見る部分がP252まで。これが、本書の主要部分で、ほとんどを占める。
P253からはおまけ的要素で、「悩みのるつぼ・メイキング」。これはどのように回答作ったかのメイキングを記したブログ記事。
P300から348までは、付録・悩み全集。全部じゃないようだけど、30以上の悩みと回答が記載されています。

なかなか面白い本でした。

この本を読んだ人は、他人からの相談に優しくなれるでしょう。
そしてきっと、今までよりいいアドバイスができるはず。

私も色々な反省をしつつ、本書には勉強させてもらいました。
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