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【ちょっと読書】ジェノサイド [読書]

昨年(2011年)のベストセラーです。

ジェノサイド

ジェノサイド

  • 作者: 高野 和明
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2011/03/30
  • メディア: 単行本



圧巻です。ずば抜けて凄い本だったと思う。

本書は日本、アメリカ、コンゴという3つの地域をまたぎ、創薬・アメリカ政治・傭兵の戦闘という3つの舞台がそれぞれ交差し物語を織りなす。


本書に出てくる要素を見ると、新薬開発、インテリジェンス、アメリカ政治、傭兵の戦闘、アフリカ問題(内紛)、ジェノサイド、少数部族、人類進化、カニバリズム、情報セキュリティ、言語といった幅広い要素が深く惜しげもなく出され、しかも周到にリアリティが確保されている。そこに父と子という人間模様・想いが織り交ぜられ、物語に厚みを与えている。


本書の内容をもってすれば、良質な長編小説が3冊はつくれたはずだ。
途中で、「あれ?もうすぐ終わるよな?でもページがまだまだ・・・」と思ったほど。


冒頭に予想した結末は途中で見事に覆され、私の想像を超えた展開で物語は進んでいった。
タイトルの「ジェノサイド」は、それこそ最初はなぜこのタイトルなのか、ジェノサイドという言葉を軽々しく使わないで欲しいと思ったいたのだが、読み進める途中で、なるほどこれしかない、と納得。



しかし・・・読んでいて辛い個所が何度かあった。


著者の圧倒的な筆力もあり、読者も登場人物と一緒に人間の極限状況に連れて行かれる。
残酷な描写もある。人間の一番醜悪な一面が描かれている。「子供がひどい目にあう場面なんて想像もしたくない」と強く感じる人や、そういった描写が本当に苦手な人は読まない方がいいかもしれない。


私は結構重症で・・・。本当に、世の中どうなっているんだと叫びたくなり目を背けたくなりました。


ただ、本書は単にインパクト重視で外道の描写をしているわけではなく、これは私たち人間に対する重大な問題提起であると感じた。なぜ、我々は戦争を止められないのか。なぜ、互いに殺し合うのか。私たちの安全は、実は非常に危ういところにかろうじて存在しているのではないか。かくいう自分自身の中にも、そういった負の片鱗は存在するかもしれない。


お手軽な博愛主義で簡単に“平和”を結論付けるのではなく、本書を読むことによって、読者はそういった問題に真剣に向き合うことになる。
というか、突きつけられる。


本書は構想20数年、著者渾身の作品。約590ページあり、文字・行間・質・エンターテイメント性、いずれもギッチリつまっている。重たいテーマを取り扱っているが読後感は良く、未来には希望を感じることのできる本。こんなに凄い小説をつくってしまうなんて、この作者の頭の中(構成力)はどうなっているのだろう??


あと、ちょっとひとこと。
アマゾンのレビューでいくつか散見されるが、本書では南京大虐殺について、それが史実であるように書かれていたりする。その点、最近では反発を感じる人もいるかもしれない。
それはわかる。気持ちはわかる。
ストーリー性をもって語られると、不必要にそういった印象が刷り込まれてしまう、という懸念もある。

そういったことに対して強い反発を感じるのであれば、本書を読むのをやめるか、あるいはそういう心構えで読むべきだ。もしくは、実はそうじゃないんだよ、という情報を積極的に発信してもいいと思う。


個人的な意見でいえば、そう思わせる箇所はほんの一部だし、本書の怒涛の面白さは変わらない。

そう思う。

反日・自虐史観全快!!というわけでは決してない。

またジェノサイドというテーマからすれば、南京大虐殺について取り上げざることもありえると思う。しかし、それが事実かどうか、某国(あるいは自国の一部)で言われていることが現実的であるのかどうか、ということについては、本書をきっかけに考えることができれば尚いいと思う。

ジェノサイド

ジェノサイド

  • 作者: 高野 和明
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2011/03/30
  • メディア: 単行本



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