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魚舟・獣舟 [読書]

久しぶりにSF小説を読んだ。

SF小説というのは、SF小説ファンでない場合、なかなか手を出しにくい。映画などであれば馴染みがあるが、小説の場合は何か、少し隔たりがあるように感じる。

まず難しい単語が次から次へと出てきそうだ。科学用語、専門用語、なんとかの理論・・・。それらの言葉を覚えたからといって、実生活で役に立つ機会もなさそうだ。

また、最近の小説は雑学というか、小ネタというか、何かしらの「へぇ~」がある。それがSF小説の場合だと、突拍子がなさすぎたり、あまりに現実離れしていたり、或いは事実なのか空想なのかの判断すら素人にはつかない。

更に、私の場合はSF小説というと、イコール宇宙というイメージがある。スターウォーズを連想し、その連想のつながりの中には何故か宇宙戦艦ヤマトやガンダムなどが、脇の方でちらつく。そして私は特に宇宙に興味はないし、残念なことにヤマトやガンダムもそんなに好きではない。

そんな私なのだが、今回読んだSF小説は、まったくの衝動買いだった。

魚舟・獣舟 (光文社文庫)

魚舟・獣舟 (光文社文庫)

  • 作者: 上田 早夕里
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2009/01/08
  • メディア: 文庫



魚舟・獣舟 (光文社文庫)

これは上田 早夕里さんとうい作家の、短編集だ。
6つのお話が収められている。

1つめの作品「魚舟・獣舟」を読んで唸り、2つめの作品「くさびらの道」を読んで驚愕した。3つめの「饗応」を読んで頭の中に?マークがあがり、4つめの「真朱の街」を読んで惚れた。5つめの「ブルーグラス」を読んで肩透かしをくらい、最後の「小鳥の墓」を読んで私は囚われた。

読んでまず思ったのは、
「こいつは凄い作品だ」
ということ。
どうしてこの分量(ページ数)で、これだけ深い作品をつくれるのか・・・。本当に不思議だ。このペースで作品を作り続ければ、日本を代表する作家になるのではないか。海外にも通用する作家である。


私はこれまで、この作家の存在を知らなかった。

本書を手にしたきっかけは、書店に平積みされている同作者の「華竜の宮(上) (ハヤカワ文庫JA)」という本に引かれたことだった。

華竜の宮(上) (ハヤカワ文庫JA)

華竜の宮(上) (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 上田 早夕里
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2012/11/09
  • メディア: 新書


タイトルを見て一瞬なぜか「中国を舞台とした歴史小説か?」などと思ってしまい素通りしそうになったのだが、帯に書かれていた推薦文に目が止まり、立ち止まった。宮部みゆきさんや貴志祐介さんが推薦している。

あらすじを見て気になった私は、文庫本の棚のコーナーに行き、同じ作者の本を探した。そして「華竜の宮(上) (ハヤカワ文庫JA)」と同じ世界の書かれている、先に出されていた短編である本書「魚舟・獣舟 (光文社文庫)」を手に取り、買うことにした。

読んで満足している。
すごい作家を掘り当てたものだ(私が知らなかっただけだが)。

正直な感想をいうと、好きな作品と嫌いな作品が分かれる。

好きな作品
・「魚舟・獣舟」
・「くさびらの道」
・「真朱の街」

面白くなかった作品
・「饗応」
・「ブルーグラス」

好きでない作品
・「小鳥の墓」

面白くなかった作品というのは、つまり面白さがわからなかった、ということだ。よくわからない。何が悪いわけではない。何を楽しめばいいのかわからなかった。「この話の楽しみ方は、こうなんだよ」というのがあったら教えて欲しい。

好きでない作品にあげた、「小鳥の墓」は、しかし、凄い作品であることは認める。ただ、私には合わなかった。この登場人物たちが。
しかし、非常に不思議で自分でも理解できないのだが、この話が好きでないにも関わらず、この話と類する話「火星ダーク・バラード (ハルキ文庫)」を読んでみようと思っている。
火星ダーク・バラード (ハルキ文庫)

火星ダーク・バラード (ハルキ文庫)

  • 作者: 上田 早夕里
  • 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
  • 発売日: 2008/10
  • メディア: 文庫


「小鳥の墓」は、著者のデビュー長編小説「火星ダーク・バラード」の前日譚なのだそうだ。解説を書かれた山岸真さんによると、<より正確には、長編の中で強烈な存在感を放っていた重要な脇役の、少年時代の物語。>ということだ。

私は短編小説(中編と言ってもいいくらいのボリューム)の「小鳥の墓」を好きでないくせに、その続きたる長編小説の方まで読もうと思っている。このモチベーションがどこから湧いてくるのか分からない。どうせなら、最初に興味を持った「華竜の宮」を読みゃいいのに・・・。


つまり、この作家は、すごい引力を持った作家なんだと思う。その引力に私は吸い寄せられる。

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