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のっとられども、せだいがかわれば [妄想の日本史]

もしあなたの家に、突然見知らぬ奴らが乗り込んできたとしよう。
あなたには家族が・・・妻と、生まれたばかりの息子がいる。

彼らは武装しているうえに人数も多い。中には、あなたの聞き取れない言葉を喋る奴もいる。


彼らの一人がいう。
「この家は今日からおれ達のものだ」


あなたは家族を守らなければならない。当然、異を唱える。と、彼らによってたかって殴られ、ぼろぼろにされてしまった。

逆らわなければ命は助ける、と言われる。

無念だが、多勢に無勢。小さい子どももいる。死ぬわけにはいかない。あなたはしばらく、大人しく耐えることにした。

彼らはリビングやキッチン、ベッドルームを占拠する。そして、あなたや、あなたの家族は狭く居心地の悪い部屋に追いやられる。もしかしたらそこは、納戸やクローゼットかもしれない。



彼らは、あなたや、あなたの家族に、労働するよう強制する。
さらに、今後の生活は、彼らの決めたルールを遵守するように求められる。
毎月この家に●●円入れろ、朝は5時には起きて掃除をしろ、豚肉はいいけれど鶏肉は食べるな・・・などなど。


彼らに占拠されたこの家で、あなた達家族は何とか生きながらえた。時に金を巻き上げられ、時にお酌などを強制され、差別的な言葉で罵られることもあった。だが、あなたは静かに、大人しく過ごし、何とかやり過ごしてきた。


それから数十年がたった。彼らとの間のトラブルも減り、次第に普通に暮らすことができるようになってきた。相変わらずこの家は支配されたままだが、たまになら、リビングやキッチンにも行くことができる。たまになら、彼らと談笑することもあるようになった。


赤子だった息子も、順調に成長した。息子が物心つくまえに、この家は占拠された。あなたはその経緯を説明しようかどうか迷ったが、屈辱の過去を話す気になれない。最近ではなくなってきたものの、当初は理不尽な扱いも受けていた。その様子を、息子は子どもながらに見ていたし、奴らの子どもから、息子がいじめられることもあった。話さずとも、息子は息子なりに違和感を感じていただろう。


やがて更に時がたち、息子は成人し、働き、そして結婚した。結婚相手は奴らの中の、ひとりの娘だった。息子が成長するにつれ、奴らとのわだかまりは消えていったようだった。あなたは複雑な思いに駆られながらも、しかし喜ばしいことでもあるのだと、そう自分に言い聞かせる。


そして、あなたに待望の孫ができる。


孫も順調に成長していく。反対に、あなたはどんどん年をとっていった。孫が大きくなる頃には、あなたは年をとりすぎて、ろくに喋ることもできない。意識はあるのだが、ぼうっと寝たきりで過ごすことが多くなっていた。

孫は、この家を乗っ取った奴らの孫の世代と普通に遊んでいる。今では奴らとの間に、差別などはなくなっていた。孫は生まれたときからこの環境なので、かつてこの家があなたのものだったなんて知らないのだ。


そして、ある時、孫がこう話しているのが聞こえた。


「この家の当主である彼らは、非常に立派な人たちだ。彼らがいてこそ、この家がある。彼らの存在は僕の自慢だ。次の日曜日、彼らのリーダーの誕生日らしい。日ごろの感謝をこめて、何かプレゼントしたいのだけど、何がいいだろう?」


あなたはどう思うだろうか。


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