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歴史の闇に葬られた事件-小生瀬の一村亡所、農民虐殺の事件を読む [読書]

常々、読んだ本についてはこのブログで紹介しようと思いつつ、忘れてしまう。
理由は、1冊読み終わると別の本を読み始めて夢中になってしまい、読み終わった本について書こうというモチベーションが少なくなるからだ。


ということで、鉄は熱いうちに打て

読み途中でも書く事にしよう。

今読んでいるのは、この本だ。

神無き月十番目の夜 (小学館文庫)

神無き月十番目の夜 (小学館文庫)

神無き月十番目の夜 (小学館文庫)

  • 作者: 飯嶋 和一
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2005/12/06
  • メディア: 文庫


この本は、ハードカバーであれば10年以上前に出された小説である。この本に出会ったのは次のような経緯である。

最近ふとしたきっかけで、「怒る富士〈上〉 (文春文庫)」を読み直した。それはこのブログでも紹介した。
・今だから読む。富士山噴火と災害復興の物語。

「怒る富士」は、現在、私の猛烈おすすめ中の本の1冊であり、面白い上にタメになるので是非読んで欲しいのだが、この小説の中に“亡所”という言葉が出てくる。


亡所とは、戦乱や災害などで人が住めなくなってしまった所のことを言う。
上記「怒る富士」では宝永の富士山噴火により、被害を受けた村々が幕府によって“亡所”とされ、いわば見捨てられた地、見捨てられた民となり、追い詰められていく姿が描かれている。これは最近で言えば福島の原発事故にあった地域が当てはまるのではないか。

ともかく、私は“亡所”という言葉が気になり、過去にそのように亡所とされた事例があるか調べようと思い、まずは気軽にググッてみた。

そこで知ったのが、この「神無き月・・・」の舞台となった、小生瀬村の百姓一揆あるいは農民虐殺という事件である。

公的な資料には残されず、僅かな伝承のみが残るこの事件は、一村皆殺しという壮絶な内容だ。徳川が天下を治める過渡期に起こったこの事件。

この伝承をもとにして書かれたのが、「神無き月・・・」なのだ。


私は今回初めて同書を手に取り読んだわけだが、この本とタイトルには見覚えがあった。うろ覚えだが、ハードカバーが発売された当時、それなりに話題になったのではないか?本書は1602年が舞台なので、歴史小説という範疇に入ると思うのだが、当時の私は本書をミステリー小説かと思っていた。当時の私は歴史小説を読まず、小説といえばミステリー小説ばかり読んでいたので、そんな私が知っているということは、きっとミステリー系の書評などでも評価され取り上げられていたのだと思う。


さて、本書はとても重厚な小説だ。
時代小説といって、わかりやすい侍や忍者が出てくるわけでもなく、そして凄惨な事件をもとにしているので、作品に漂う空気は重く、暗澹たる気持ちの中で本書を読み進めることになる。

と言ってもどんな本か想像できないと思うので、文庫の裏表紙に書かれているあらすじを紹介しよう。

慶長七年(1602)陰暦十月、常陸国北限、小生瀬の地に派遣された大藤嘉衛門は、野戦場の臭気が辺に漂う中、百軒余りの家々から三百名以上の住民が消えるという奇怪な光景を目の当たりにする。 いったいこの地で何が起きたのか? 嘉衛門はやがて、地元の者が「カノハタ」と呼ぶ土地に通ずる急峻な山道で、鳥や野犬に食い荒らされるおびただしい死体を発見した。 恭順か、抵抗か-体制支配のうねりに呑み込まれた土豪の村の悪夢。長く歴史の表舞台から消されていた事件を掘り起こし、その「真実」をミステリアスかつ重厚に描いて大絶賛された戦慄の物語。」

大絶賛された、とあるが、その評価は適切だと思う。
アマゾンのレビュを見ても、かなりの高評価だ。
↓ ↓ ↓
神無き月十番目の夜 (小学館文庫)

約420ページ。
序章から始まり、第三章まである。

冒頭で書いたとおり、現時点で私はまだ読み途中である。現在、第二章。128ページまで読みすすめている。まだ3分の1に届かない。

最後まで読み、そして『「隠れ里」の惨劇』という川村湊さんの解説を読むのが楽しみだ。


歴史の闇に葬られた事件。
歴史好き、伝承好きには特におすすめしたい。
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私たちの祖先とアバター [これから日本の話をしよう!]

先日、テレビで放映されていた「アバター 3Dブルーレイ&DVDセット(2枚組) [Blu-ray]」を見た。

アバター 3Dブルーレイ&DVDセット(2枚組) [Blu-ray]

アバター 3Dブルーレイ&DVDセット(2枚組) [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • メディア: Blu-ray


あらすじをアマゾンから引用すると、

-------------------------
22世紀、人類は地球から遠く離れたパンドラで<アバター計画>に着手していた。この星の先住民ナヴィと人間のDNAを組み合わせた肉体<アバター>を創ることで、有毒な大気の問題をクリアし、莫大な利益をもたらす鉱物を採掘しようというのだ。この計画に参加した元兵士ジェイクは車椅子の身だったが、<アバター>を得て体の自由を取り戻す。パンドラの地に降り立ち、ナヴィの族長の娘ネイティリと恋に落ちるジェイク。しかし彼はパンドラの生命を脅かす任務に疑問を抱き、この星の運命を決する選択を強いられていく……。
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という感じだ。

ようするに、先住民が住む場所にある高価な鉱物が欲しいがために、餌で釣って立ち退かせるか、それが上手くいかなければ、武力行使をする

そういうお話である。


この手のことは、歴史上の中で実際に何度も行われてきた。

人類の歴史は、この繰り返しだったといってもいい。

この映画の先住民は、アメリカ大陸におけるネイティブアメリカン(インディアン)を思わせるし、オーストラリア大陸で狩猟生活を営んでいたアボリジニの悲劇も同様だ。
最近でも-これは真偽不明であったが-米ベネズエラでアマゾン先住民虐殺の報があった。


では、日本はどうだったか?


「東の夷の中に、日高見国有り。
 その国の人、男女並に椎結け身を文けて、人となり勇みこわし。
 是をすべて蝦夷という。
 また土地沃壌えて広し。
 撃ちて取りつべし」

そう進言したのは東方諸国を視察した武内宿禰である。

鉄や金などを産出する豊かな山をもつ東国は、狙われることになる。


最大の戦いの1つは、やはり蝦夷のリーダー、アテルイによるものだと思う。これは現在NHKでドラマ化されている。高橋克彦氏による原作も文庫で出ていて、非常に面白いのでぜひ読んでもらいたい。このブログでも何度か紹介している。

火怨 上 北の燿星アテルイ (講談社文庫)

火怨 上 北の燿星アテルイ (講談社文庫)

  • 作者: 高橋 克彦
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2002/10/16
  • メディア: 文庫


蝦夷なんて、俺たちには関係ない?

いやいやいや、大アリだと思う。

私たちの祖先が朝廷の側にしろ、蝦夷の側にしろ、これらは複雑に混じり合っていると思う。捉えられた蝦夷は俘囚として、各地に住まわされた。反対に、東海・東国の人々は九州にも戦争に動員されて東北の地へ、或いは移住などもさせられた。似たようなことは関ヶ原の戦後や、明治維新で敗れた会津藩などでも起こっている。

我々はミックスされていると思う。

少なくともフォッサマグナの東側、東日本に住んでいる人なら、「火焔」を強くおすすめしたい。


さて、アテルイの戦いは平安時代、800年前後の話だが、それ以前はどうか?

思うに、大国主(オオクニヌシ)の国譲りや、神武東征で長脛彦(ナガスネヒコ)や饒速日命(ギハヤヒノミコト)のくだりは、やはりアバター的な侵略を思わせる。特にオオクニヌシの国譲りは、どう見ても・・・ねぇ・・・。


今は本当によい世界になったと思う。
平和だ。

この平和は、壊したくないと思う。

嫌だよ、戦だなんだと兵として動員されたり、野兵盗賊の類に略奪されたり、防人のように関東に住んでいるのに九州へ生かされて兵役につかされたり。そんなのは、嫌だよね。

この平和の礎の下には・・・
私たちの何代も何代も前のご先祖様の中には、理不尽な略奪や襲撃や簒奪にあった人々も多かっただろう。旧貴族でもない限り、多くの人のご先祖様は戦い、あるいは敗れ、土地を守り、あるいは酷使され、辛い目にもあって今があるのだと思う。

ともかく火焔はおすすめなので、是非読んでもらいたい。

火怨 上 北の燿星アテルイ (講談社文庫)

火怨 上 北の燿星アテルイ (講談社文庫)

  • 作者: 高橋 克彦
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2002/10/16
  • メディア: 文庫



火怨 下 北の燿星アテルイ (講談社文庫)

火怨 下 北の燿星アテルイ (講談社文庫)

  • 作者: 高橋 克彦
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2002/10/16
  • メディア: 文庫



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今だから読む。富士山噴火と災害復興の物語。 [これから日本の話をしよう!]

手抜き汚染という問題が勃発している。
私たち国民の血税から、数千億という大きな資金を投入して行われている除染事業。大手のゼネコンから2次3次4次5次と気が遠くなるほどの下請けが入り、最終的に除染はまともに行われず・・・という結果だ。


私はこれを見て、1冊の本を思い出した。
そしてこの本は、できるだけ多くの日本国民に読んで欲しいと、切に願った。
怒る富士〈上〉 (文春文庫)

怒る富士〈上〉 (文春文庫)

  • 作者: 新田 次郎
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2007/09/04
  • メディア: 文庫


この「怒る富士〈上〉 (文春文庫)」という小説は、江戸時代が舞台である。最後の富士山の噴火、宝永の大噴火による災害がメインテーマとなる。そこで繰り広げられる権力者たちの振る舞いは、先の原発&東日本大震災の復興の姿と、とてもよく重なる。

この小説には人間が描かれている。硬直してお役所的になってしまった、日本人のダメな側面が描かれている。


この小説は上下巻に分かれていて、もちろん時代小説という体裁だ。時代小説というのは、普段読まない人にとって少し敷居が高い。面白いのだろうかと心配に思うかもしれない。表紙の画像を見て、古臭そうと感じるかもしれない。

大丈夫。
この本は、純粋に面白い。時代小説への慣れは関係なく読める。でありながら、時代小説ファンも大満足できる作品であると思う。

本書を読むべき理由、おすすめの理由を3つ紹介しよう。


1.来たるべく富士山噴火に備える
多くの人が、富士山の噴火について正しくイメージできていないと思う。桜島や、少し前の三宅島の噴火をイメージしているかもしれない。しかし、まったく違う。噴火の規模が違うのだ。宝永の噴火と同じ規模の噴火が、今この日本を襲ったとしたら、この国はあまりに大きなダメージを受けることになる。時代が変わる。この小説を読めば、それがイメージできる。原発除染の体たらくを見るに、富士山噴火の後の復興は、遅々として進まないものと推測できる。
近いうちに来ると言われている富士山の噴火。そして本書は古い資料をもとに噴火の様子が描かれている。備えるためにも、読んでおくべきだと思う。


2.今と変わらない利権や政治活動
この小説を読めば、きっとこう感じるはずだ。
「あれ?デジャブ(既視感)??」
富士山噴火の後の復興が遅々として進まない。災害を政治に利用し、私利私欲に走る政治家。そう、今起こっている問題そのものが、この小説に書かれている。この小説を読むことによって、今の問題がより鮮明に映るはずだ。
そして、部分的には、非常に残念なことに、今の方が江戸時代より遅れている。


3.人が、人生が書かれている
純粋に面白い小説だと思う。仕事の進め方、リーダーシップのあり方、男女関係の難しさ、人生の勝機のつかみ方、あるいは転落の様。色々な人間が描かれていて、それが面白い。


できるだけ多くの人に読んで欲しい本だ。
読む価値のある本だ。

いや、日本人であれば、読むべき本だと思う。
今こそ。今だからこそ。切に願う。
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