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未来の予想図 [読書]

最近ちょっと気になる本がある。

ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉」という本で、アマゾンのレビュワーさんの言葉を借りると、「未来の社会をとらえた良書として、アルビン・トフラーの第三の波やダニエル・ビンクのハイコンセプトに匹敵する傑作」という。

ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉

ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉

  • 作者: リンダ・グラットン
  • 出版社/メーカー: プレジデント社
  • 発売日: 2012/07/28
  • メディア: 単行本



どんな本なのか、アマゾンから商品説明を引用しよう。

<下流民か、自由民か。地球規模で人生は二極分化する*

2025年、私たちはどんなふうに働いているだろうか?
ロンドン・ビジネススクールを中心とした、「働き方コンソーシアム」による、
世界規模の研究が生々しく描き出す2025年のに働く人の日常。
「漫然と迎える未来」には孤独で貧困な人生が待ち受け、
「主体的に築く未来」には自由で創造的な人生がある。
どちらの人生になるかは、〈ワーク・シフト〉できるか否かにかかっている。>

<「食えるだけの仕事」から意味を感じる仕事へ、
忙しいだけの仕事から価値ある経験としての仕事へ、
勝つための仕事からともに生きるための仕事へ。
覚悟を持って選べば、未来は変えられる。 >

気になるじゃないか。

なぜに私がこの本を気になっているかというと、1つに将来に対する漠然とした不安が長く払拭できずにいて、2つめに、私自身にこのところずっとスランプが続いているところにある。

要するに私が弱っているのだ。私が低下している。

何かしらの光明を、手がかりを見つけたいと思っている。その不安と焦りが、未来予想の本に魅力を感じさせる。

また別のレビュアーさんのレビューを紹介しよう。
「本書は、今後の世界に起こる変化を丁寧に整理した上で、そうした近未来の社会における人々の労働のありかたについて、各種予測に基づいたアドバイスを行うものです。」


そう、私もアドバイスが欲しいのかもしれない。

こんな時、人は占い師やら霊能師やらトータルコーディネーターやらスーパーメディアクリエイターやらにハマるのかもしれない。


では、そんな未来予想の本を書くような、この本の著者はどんな経歴の人なのか。

リンダ・グラットン。
ロンドン・ビジネススクール教授である。

<経営組織論の世界的権威で、英タイムズ紙の選ぶ「世界のトップビジネス思想家15人」のひとり。
ファイナンシャルタイムズでは「今後10年で未来に最もインパクトを与えるビジネス理論家」と賞され、
英エコノミスト誌の「仕事の未来を予測する識者トップ200人」に名を連ねる。
組織におけるイノベーションを促進するスポッツムーブメントの創始者。
『HotSpots』『Glow』『Living Strategy』など7冊の著作は、計20ヶ国語以上に翻訳されている。
人事、組織活性化のエキスパートとして欧米、アジアのグローバル企業に対してアドバイスを行う。
現在、シンガポール政府のヒューマンキャピタルアドバイザリーボードメンバー。>

教授であり、一流経済誌で評判が高く、一国のアドバイザリーに名を連ねているとくれば、これは大した“社会的権威”ではないか。

しかし、読書中の本があり、読書予定の本が山積みの現状だと、すぐに買うわけにも行かない。

書店をのぞき、チラよみをしてから尚且つそそられれば、おそらく再度、ここで紹介することになるだろう。

ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉

ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉

  • 作者: リンダ・グラットン
  • 出版社/メーカー: プレジデント社
  • 発売日: 2012/07/28
  • メディア: 単行本



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戦後史の正体を読んだ人に、読んでもらいたい本 [読書]

いま話題の本、「戦後史の正体 (「戦後再発見」双書)」は、この分野の本にしてはかなり売れているが、それなりの理由もあるように思う。

本書は戦後の日本のあり方を問う。

戦後史の正体 (「戦後再発見」双書)

戦後史の正体 (「戦後再発見」双書)

  • 作者: 孫崎 享
  • 出版社/メーカー: 創元社
  • 発売日: 2012/07/24
  • メディア: 単行本



で、この本を読んだ人に是非お勧めしたい本がある。

それは「23分間の奇跡 (集英社文庫)」という文庫本だ。

23分間の奇跡 (集英社文庫)

23分間の奇跡 (集英社文庫)

  • 作者: ジェームズ・クラベル
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 1988/07/20
  • メディア: 文庫


この本、ページ数はすごく少ない。
おそらく10~20分で読み終えてしまうと思う。

しかし、内容がすごい。

あらすじをアマゾンから引用しよう。

「教育とは、国家とは、自由とは何か?ある小学校へ新任の女教師がやってきて、そして起きた驚くべき23分間のドラマ。小学生にも読めるようなやさしい文章で、恐るべき問題をつきつける衝撃の物語。」

この本は物語仕立てのショートストーリー。舞台は小学校である。

「みなさん、おはよう。わたしが、きょうからみんなの先生ですよ」と新しい先生がいった。時間はちょうど9時だった。その女教師は“最初の授業”で、いったい何を教え、そして子供たちは、23分間でどう変わったのか―?


そう、子供たちが23分間で変わってしまうのだが、どう変わってしまうのか。


洗脳、教育、国家とは、自由とは・・・。


今、この本が示唆するものは非常に重要だ。
これは決して過去についてだけのものではない。今の私たちにも重要な、必要な本だと思う。


アメリカ寄りも中国寄りも関係ない。
多くの人にとって必読の本だと思う。

まさにあっという間に読み終えられるし、しかし内容が良いため、コストパフォーマンスにも優れていると思う。

ぜひたくさんの人に読んでもらいたい。
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今後を考えるために、この夏に必読の2冊 [読書]

韓国といい、中国といい、そしてアメリカといい・・・


日本の周辺が騒がしい。


また、韓国の李大統領の、この発言。

「国際社会における日本の影響力は以前のようではない」


長引く不況と高齢化、そして震災の痛手に苦しむ日本。


国力が弱まるということは、こういうことか・・・。


となれば、今、この本は必読となるだろう。
戦後史の正体 (「戦後再発見」双書)


戦後史の正体 (「戦後再発見」双書)

戦後史の正体 (「戦後再発見」双書)

  • 作者: 孫崎 享
  • 出版社/メーカー: 創元社
  • 発売日: 2012/07/24
  • メディア: 単行本



本書を読んで、どうするか。


アメリカがダメだから中国、というのは間違った判断だ。

本書を読むことによって、日本はどうあるべきか。
国益とは、周辺国との関係は、国際社会でどう存在感を出すか、諸外国に対して有効な手を打つための手札をどう用意するか、そういったことを考えるべきだ。


20年後、30年後に大人になる子どもたちの世代が、少しでも有利であるように。


戦略を考える上で、本書が役に立つ。

良い戦略、悪い戦略


良い戦略、悪い戦略

良い戦略、悪い戦略

  • 作者: リチャード・P・ルメルト
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2012/06/23
  • メディア: 単行本


本書はビジネス書のところに置いてあるが、取り上げられるケースはハンニバルからと種類が豊富だ。


気になっているキーワードを上げよう。
・死活的に重要な要素にリソースを集中させる
・戦略とは、組織が前に進むにはどうしたらよいかを示すもの。
・戦略を立てるとは、組織にとって良いこと、好ましいことをどうやって実現するか考えること。
・近い目標-足場を固めて選択肢を増やす
※アマゾンの私のレビューから一部転載

この“よい戦略”とは、もちろん個人レベルでも有効だが、国家レベルであればそれこそ死活問題として重要度が増す。

戦後史の正体 (「戦後再発見」双書)」と「良い戦略、悪い戦略」。

この夏、今後を考える上で必読の2冊と思う。
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戦後史の正体を読んでみた。更に、夜の国と魔王について考えてみる。 [読書]

少し前にこのブログで、戦後史の正体 (「戦後再発見」双書)という本について触れた。
・話題の「戦後史の正体」

随分と話題になっている本だ。
アマゾンのランキングでも、しばらく総合ベスト10内をキープしていた。
アマゾンで注文しようかと思ったが、すぐに手に取りたいという気持ちもある。2~3店、書店をまわっても置いてなく、あと1店まわってなかったら諦めようと思ったところ、その本屋には大量に置かれていた。

あるところにはあるものだ。


初版買いに微妙にこだわる私。
奥付を見ると初版であり、ちょっぴりニンマリ。

ついている。

さっそく購入し、すぐに引き込まれる。

2~3日前に読了した。

戦後史の正体 (「戦後再発見」双書)

戦後史の正体 (「戦後再発見」双書)

  • 作者: 孫崎 享
  • 出版社/メーカー: 創元社
  • 発売日: 2012/07/24
  • メディア: 単行本



面白かった。

実は私、戦後史にあまり興味がない。

読んだとしても戦中くらいまでで、戦後はちょっと苦手だった。
戦後というと、私の中では歴史ではなく、学校の科目でいうと“社会”の範疇に入る。こういっては何だが、登場する人物達もどこか現実っぽくてつまらない。

戦後であれば、どちらかというと政治関係よりも、企業関係の方が面白そうだ。そう思っていた。


いやいやいや、戦後史、面白いじゃないか。


登場人物たちも、ずいぶんと魅力的だった。

石橋湛山(この人は以前から好きだが)、重光葵、岸信介、芦田均、鳩山一郎・・・
今までの評価が一変した。

この本を読んでいると、現在の日本の成り立ちが見えてくる。
本書でも引用されていたE・H・カーの「歴史とは現在と過去との対話である」という言葉。

まさに、過去の歴史を勉強し、知っていく中で、現在を読み解いていくことができる。


知らなかったこと、知っているつもりで全然わかっていなかったこと、色々のことを知ることができた。


本書は、、【これまでほとんど語られることのなかった「米国からの圧力」】を軸に、日本の戦後史を読み解く。


私自身、ずっと不思議に思っていたことがある。


つい半世紀前に、世界で始めて、しかも2度も原爆を落とされた日本。
鬼畜と読んでいたアメリカに原爆を落とされ、その傷跡はいまだに残っている。
日本の歴史上、これだけ多くの日本人を傷つけ殺戮した国と言うのは、ないのではないか?
遠い昔のことではない。その犠牲者達は、今でも生き残っている。

ところが。

今の私達の、このアメリカとの新密度、アメリカに対する信頼関係はどうだろう?

同じく先の戦争で敵対していた中国、ロシアと異なり、我々の多くはアメリカを“こっち側”だとみなしている。


なぜこんなにも、我々日本人はアメリカを受け入れるのか。

その理由の一端を、本書から掴んで欲しい。


そういえば、この本を読みながら、少し前に読んだ小説、「夜の国のクーパーを思い出した。

夜の国のクーパー

夜の国のクーパー

  • 作者: 伊坂 幸太郎
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2012/05/30
  • メディア: 単行本


クーパーは伊坂幸太郎さんの最近出た小説だ。

ほんの少しだけ内容に触れるので、

ネタばれ厳禁の人は以下を読まないでくれ。


さて。


この小説のなかで、ある王様が出てくる。
この王様は国民の信頼もあつく尊敬されているのだが、実はこの王様、国民を裏切っていた。国民の前ではいい王様の演技をしていただけで、実は大国のいいなり。危機を煽り、しかし実は全てが嘘だった。


・・・そういう話が出てくる。

あれは、もしかして・・・。


伊坂さんの小説は-これは私の勘ぐり過ぎなのかもしれないが-色々と連想させるようなものがあって、実はこんなことを言いたいんじゃないかと、私は勝手に推測して楽しんでいる。

以前の作品に魔王 (講談社文庫)という作品があるのだが、この本の内容は非常に不穏なものだった。
魔王 (講談社文庫)

魔王 (講談社文庫)

  • 作者: 伊坂 幸太郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2008/09/12
  • メディア: 文庫


国民が若くカリスマ性のある政治家に煽られ、熱狂していく過程、そしてファシズムについて書かれているのだが、私は勝手に、別のことを考えていた。

この小説は、宮沢賢治の詩を使っている。宮沢賢治といえば法華経、昭和ファシズムで法華経は隠れた重要なキーワードだ。その関連で、石原莞爾(石橋湛山じゃないよ)がいる・・・。


なんて、考えを飛躍して私は伊坂小説を楽しんでいる。


その楽しみ方で行くと、やはりクーパーに出てくる王様と国民、そして大国との関係は、もしかして日米戦後史を示しているのではないか、と、私は想像して楽しむ。

そう、作中でもこんなセリフが出てくる。


「何が正しくて、何が誤っているのか、自分で判断しろ。それが重要だ」


私達は、あまりにもぼけっと過ごしすぎていないか。


手軽で安くて美味いファストフードを用意され、喰っちゃ太り、
映画やテレビなどの娯楽、スポーツや祭典、性風俗の解禁(3Sだな)、

経済も軍事も、アメリカにおんぶで抱っこなら安心か。

日本にとっての国際政治は、アメリカとの関係だけなのか。

戦後史の正体 (「戦後再発見」双書)は、かつて志をもって日本の自立を考えた、多くの先人を紹介してくれる。


そのうえで、今一度考えるのだ。

本書の内容をそのまま丸呑みして、復唱するだけじゃダメだ。
ここから始めるのだ。知ることと、考えることを。


そして、日本にとっての、外交の最善策を。

どのような国になるのかを。

私達の生き方を。

何が大切で、どうすべきなのかを。

「何が正しくて、何が誤っているのか、自分で判断しろ。それが重要だ」

戦後史の正体 (「戦後再発見」双書)

戦後史の正体 (「戦後再発見」双書)

  • 作者: 孫崎 享
  • 出版社/メーカー: 創元社
  • 発売日: 2012/07/24
  • メディア: 単行本



その機会として、本書をお勧めする。
読了してからの意見は、それぞれだろう。それでいいと思うし、そうあるべきだと思う。


ところで、先に紹介した小説魔王 (講談社文庫)だが、実は漫画化もされている。

魔王だけでなく伊坂作品の色々な要素を入れて、それこそ漫画らしくなっているのだが、その内容たるやものすごい。もう1つの魔王として、しかし伊坂さんのエッセンスを消さずに、完璧にその存在感をあらわしている。ただの漫画化ではない。

レビューを読めばわかるでしょう。これも、お勧め。

魔王 1―JUVENILE REMIX (少年サンデーコミックス)


魔王 1―JUVENILE REMIX (少年サンデーコミックス)

魔王 1―JUVENILE REMIX (少年サンデーコミックス)

  • 作者: 大須賀 めぐみ
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2007/11/16
  • メディア: コミック


全10巻。
在庫がなくなる前に、読んでみるべし。

おそらくあなたは、度肝をぬかれるだろう。

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怖い話・・・残穢 [読書]

少し前に紹介した「残穢」ですが、少し前に読了した。
・ブログ「残穢と鬼談百景」

残穢

残穢

  • 作者: 小野 不由美
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2012/07/20
  • メディア: 単行本


なんというか、不気味な本だった。
この本は、同時発売の「鬼談百景 (幽BOOKS)」とリンクしている。こちらは百物語形式(99話)で、【こういった怪異の話を集めている作家が、ふと首を突っ込むことになったヤバイ話】が本編「残穢」だ、という形式だろうか。

同時に読んだほうが楽しめるが、しかし、必ずしも必要なわけじゃない。独立して十分に楽しめる。

さて、残穢だが、すごく怖いという盛り上がりがあるわけではない。主人公は作者そのものなのだが、あくまで冷静に、淡々と怪異について調べていく。やがて、その怪異は土地に染み付いたものなのではないか、というところにたどり着くのだが、大きな盛り上がりがあるわけじゃないのに、なんだかうすら怖い。


作中では、主人公(というと違和感があるな)たちは怪異の元を辿って、その土地について調べていくのだが、この方法というのは、私もよくやるものである。

私は別に怪異を探りたいわけではなく、あくまで歴史・民俗について知りたいがための調査なのだが、そこで時折、いわゆる異常“そうな”話というのに突き当たることがある。

そんな時、私は深くは首を突っ込まない。それ以上を知ろうともしない。潔く諦める。


何故か。

怖い上に、めんどくさいからだ。


ちなみに、私はスピリチュアル的なものや、霊的なものを信じているわけではない。はっきり言って、信じていない。しかし、恐怖は感じるのである。
そして“何かがある”と言われているものの場合、その“何か”の正体について、たとえ仮説レベルでさえも推測の立たない場合、触れるのは危険だと判断する。

「あそこに行くと不幸になる」の原因が、霊的なものなのか、或いは有害なガスが発生しているのかもしれない。ともかく、何かがある可能性はあるのだ。


さて、残穢はほぼノンフィクションの形をとっている。完全なノンフィクションであれば、小説にする必要はない。だからおそらく、フィクションなのだろうと思う。一部分か、全てかはわからないが。

興味深かったのは、こういった怪異の話の中には、書けないものがあるという話。全ては書けない。なぜなら、書いてしまうとヤバイから。非常にヤバイらしい。だから一部を封印(書かない)しないと、書けない。その代表例が、「新耳袋―現代百物語〈第4夜〉 (角川文庫)」に掲載されているらしい。
新耳袋―現代百物語〈第4夜〉 (角川文庫)

新耳袋―現代百物語〈第4夜〉 (角川文庫)

  • 作者: 木原 浩勝
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2003/06
  • メディア: 文庫


どの話か気になるだろうが、それは残穢に書かれているので、ちゃんと自分で読んで確認してほしい。さて、こういった書けない話もあるということであれば、本書・残穢も、そういった意味合いで小説という形式に変えているのかもしれない。

・・・とは穿ち過ぎか。

書けない、語れない、そういう話がある、という。
これについても、霊的なものを信じないという私は、それでもやはり、私自身も書きたくないし、語りたくもない。

やはり、何かがあるのだろう。

触れるな危険、ってわけだ。

2000年代の名作SF小説に、「虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)」という作品がある。若い日本人作家が書いたものだが、作者が急逝してしまったことが悔やまれる、重厚な作品だ。

ここに、読んだり目にすることによって人々を虐殺へと傾ける、「虐殺の文法」なるものが登場する。

それのように、まるで催眠術のように、或いは食物を体に摂取するように、言葉を脳に摂取することで、人体と精神に害をなす、一連の文法があるのかもしれない。


逆に、私は思うのだが、魔を払うというお経や、或いは護符の類というのも、それ自体に効果があるわけではなく、一連の作法によって自らを強く持つことに効果があるのではないか、とそう感じている。

こんな書き方はアホっぽいかもしれないが、明るく元気になる歌を大声で歌っていれば、怖さを吹き飛ばせる。恐怖とは、それ自体が呪であり、呪は恐怖に己自身が囚われることではないか、と思うのだ。


とかなんとか、いろいろと書いているが、そういった悪あがきを凌駕する大きなケガレに、本作では行き当たる。そのケガレはまるで伝染病のような性格をもち、止むことを知らない。

こんなんに遭遇してしまったら、すごく嫌だな。

日本人に特有のケガレ思想や、本作と似たような話、或いは本作でも触れられている怪異の持続期間など、いくつか触れたい話はあるのだが、またの機会にしよう。

とりあえず、この猛暑の夏、肝を冷やしたいのなら、外の危ない世界に行く前に、本書で存分にどうぞ。
残穢

残穢

  • 作者: 小野 不由美
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2012/07/20
  • メディア: 単行本



鬼談百景 (幽BOOKS)

鬼談百景 (幽BOOKS)

  • 作者: 小野不由美
  • 出版社/メーカー: メディアファクトリー
  • 発売日: 2012/07/20
  • メディア: 単行本



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話題の「戦後史の正体」 [読書]

最近気になる本がある。

戦後史の正体 (「戦後再発見」双書)」だ。

戦後史の正体 (「戦後再発見」双書)

戦後史の正体 (「戦後再発見」双書)

  • 作者: 孫崎 享
  • 出版社/メーカー: 創元社
  • 発売日: 2012/07/24
  • メディア: 単行本


良いという評判をよく聞き、アマゾンランキングでも、この分野の本にしては異例の上位にランクしている。

アマゾンのレビューを見ても概ね高評価。
「発禁になる前に読め!」
「ここまで書いてよいのかと思うくらい、戦後の長期間にわたる対米外交の裏面が暴露されている」
「見方が一変した」「目からウロコ」などなどの言葉が・・・。


この手の本を読む場合、著者の立ち位置に十分気をつけなければいけないが、最近、アメリカに対しての見方を変えるような本の健闘が目立つ。

無条件におすすめするわけではないが、例えば、
プーチン 最後の聖戦 ロシア最強リーダーが企むアメリカ崩壊シナリオとは?

プーチン 最後の聖戦  ロシア最強リーダーが企むアメリカ崩壊シナリオとは?

プーチン 最後の聖戦 ロシア最強リーダーが企むアメリカ崩壊シナリオとは?

  • 作者: 北野 幸伯
  • 出版社/メーカー: 集英社インターナショナル
  • 発売日: 2012/04/05
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


政府は必ず嘘をつく アメリカの「失われた10年」が私たちに警告すること 角川SSC新書

政府は必ず嘘をつく  アメリカの「失われた10年」が私たちに警告すること  角川SSC新書

政府は必ず嘘をつく アメリカの「失われた10年」が私たちに警告すること 角川SSC新書

  • 作者: 堤 未果
  • 出版社/メーカー: 角川マガジンズ(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2012/02/10
  • メディア: 新書



色々な見方が重要で、そろそろ私たちも冷静に国というものについて考えたほうがいいのではないか、ということか。

それにしても本書、高評価だ。
そこまで言われては読みたくなるものの、時間が・・・。
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残穢と鬼談百景 [読書]

楽しみな本がある。

小野 不由美さんの新作ホラー小説、「残穢」と「鬼談百景 (幽BOOKS)」だ。

残穢

残穢

  • 作者: 小野 不由美
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2012/07/20
  • メディア: 単行本



鬼談百景 (幽BOOKS)

鬼談百景 (幽BOOKS)

  • 作者: 小野不由美
  • 出版社/メーカー: メディアファクトリー
  • 発売日: 2012/07/20
  • メディア: 単行本


新作が2冊同時にリリース。

残穢が長編、鬼談百景が短編ということらしい。

小野 不由美さんといえばティーンズ小説出身だが、あなどるなかれ。筆量十分、とんでもない書き手だ。私はこの新作、まだ読んではいないのだが、小野 不由美さんに関しては信頼している作家の1人なので、レビューや評判を気にせず購読するつもりでいる。

小野 不由美さんといえばとんでもない長編が多いのだが、今回の残穢は、小野 不由美さんからすればそこまででもない。とはいえ五〇〇枚書き下ろし。

ちょっとあらすじを引用しよう。
<怨みを伴う死は「穢れ」となり、あらたな怪異の火種となるのか──。畳を擦る音が聞こえる、いるはずのない赤ん坊の泣き声がする、何かが床下を這い廻る気配がする。だからあの家には人が居着かない──何の変哲もないマンションで起きる怪奇現象を調べるうち、浮き上がってきたある「土地」を巡る意外な真実。>

穢れがテーマとは、日本的でいい。が、純和風というものでもなさそうだ。

純和風な展開でいえば、小野さんの以前の作、これが面白かった。
ゴーストハント6 海からくるもの (幽BOOKS)

ゴーストハント6 海からくるもの (幽BOOKS)

ゴーストハント6 海からくるもの (幽BOOKS)

  • 作者: 小野不由美
  • 出版社/メーカー: メディアファクトリー
  • 発売日: 2011/09/22
  • メディア: 単行本


<日本海を一望する能登半島で料亭を営む吉見家。この家は代替わりのたびに、必ず多くの死人を出すという。依頼者・吉見彰文の祖父が亡くなったとき、幼い姪・葉月の背中に不吉な戒名が浮かび上がった。>

“古い信仰が残る土地”で起こる怪異。私自身、この作品のレビューにも書いたのだが、
「本書で取り上げられているような素材(塚や信仰や歴史)は、日本各地に残っています。
私、趣味がてらよく見て回っているのですが、多くの場合は忘れ去られていますが、似たような設定をよく見かける。(中略)私たちは気づいていないだけなのかもしれない。吉見家のミニ版や少し形を変えただけの話なんて、けっこうあるのかも……。」
というのは、実感でもあります。

ちなみに、私自身は霊などを信じているわけではないのですが、設定・状況が似ているケースというのが、現実の社会の中にもある。

とりあえず、純和風の「海からくるもの」は面白かったのですが、今回のは、それとはまた違った展開の様子。


ところで、穢れという感覚は、日本人にはとても強く残っている。
小説家で逆説の日本史シリーズを書いている井沢元彦さんは、よく「中年オヤジや、あるいは死人が使っていたハシやコップが、物理的に綺麗に殺菌されていたとしても、使うの嫌だろ?」的な説明により穢れを説明されたりするが、まさに、嫌だ。


この何となく感じる存在感-穢れという感覚は、私たち日本人に強く染み込んでいる。

正体不明の感覚、穢れ。

【浮き上がってきたある「土地」を巡る意外な真実】というのだから、その穢れが、恐らく土地に染み込んでいる?

いわゆる忌み地というやつか。

そういう土地は、けっこうあるものだ。


地方ではわからないが、私の住んでいる地域では、おそらく30年くらい前までは、忌み地を知っている人と言うのは割りといた、ようだ。それでも古老中心だろうが。
ところが、今ではそういったものを知っている人は、0ではないが、ほとんどいない。

恨みをもったものが死に、そこに住むものは長く続かない、であるとか、かつては死体置き場だった、とか、そういう土地が、やがて廃屋になり、地主が手放し切り売りされ、雑地になり、整備され、マンションになったりする。

私は神社めぐりが好きだが、先日いったところは、神社が取り壊され、戸建て住宅になっていた。そこがかつて神社であったこと、住民はしっているのだろうか?また、この住民が住んだ後に売られた場合、そこは旧神社の地ではなく、単なる旧住宅の地となる。こうなると告知義務もないかもしれない。


と話は脱線したが、小野さんの新作、非常に楽しみだ。

本屋でちらりと見たのだが、やはり分量はそれほど多くはなさそうだ。たっぷりと楽しみたい身としては、少し残念でもある。しかし2冊同時発売なのでいいか。


購入することは決まっている。
あとは、読む時間の確保である。
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給与の決まり方と、価値の決まり方 [読書]

何気なく手にとった本だが、「
僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか? (星海社新書)
」が面白かった。

僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか? (星海社新書)

僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか? (星海社新書)

  • 作者: 木暮 太一
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/04/26
  • メディア: 新書


タイトルを見たときは、てっきり自己啓発的な、自分探し的な本かと思ったが、そうではない。

給料の仕組みと、働き方についての考え方、を説明している本だった。


給料の仕組みと言うと、私はよく先輩に「自分の給料の3倍稼げ」的なことを言われた覚えがある。

また、知人友人などから「自分は会社にこれだけ貢献している。その割には待遇が悪く、役立たずの上司ばかりが優遇されている。理不尽だ」的な愚痴をよく聞いた覚えがある。


本書は言う。

「成果主義といったところで、例えば成果を2倍にしても、給料は2倍にならないでしょ?」

と言う。

「給料が決まる仕組みは、成果じゃないんだ。それは必要経費と、価値できまるんだよ」

そうなのか・・・。

これだけ書いたところで、おそらく意味は通じないだろう。
しかし、本書を読めば、その意図するところは納得できる。


私達は間違った選択をし、間違った方向に努力をしている。故にいわゆるラットレースから抜け出せない。苦しい苦しいレッドオーシャンの食い合いだ。


必要経費と価値。
この2つを最大化する働き方を選択することで、この非常で無意味な競争から抜け出そうと本書は言う。もっと違う生き方をしようぜ、と。


その方法が正しいのかどうなのかは分からない。
が、例えばその働き方というのは、「好きなことを仕事にする」ことでも「仕事をエンジョイする」ことでもなく、フォーカスすべきは「興味を持てる」ということだというのは、自分に当てはめてみて納得できる。


また積み重ねにならない仕事、なる仕事という区分けも、分かっているようで分かっていない人は多いと思う。頑張る方向性を間違え、時間と労力を無駄にしてしまうことはよくあることだ。



また給与の決まり方、つまり必要経費と価値という部分については、そのままマーケティングや会社そのものにも当てはまると思う。

価値には、使用価値と価値の2種類を本書では示している。私は今、とあるプロジェクト(というほど大層なものではないが)を検討しているのだが、使用価値ばかりに目が行き、価値の部分を軽視していたことに気がついた。
危ないところだった。会社の価値が低くなれば商品の価値も低下し、ひるがえって私達の給料にも影響、すなわち私達の価値も低くなるかもしれない。


就職する人、転職を考えている人、猛烈に働いていてふと立ち止まってみた人・・・おすすめである。

ま、機会があれば、ご一読を。

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夜の国のクーパーを読む② [読書]

前回に引き続き、伊坂幸太郎さんの新作長編「夜の国のクーパー」を読む。
夜の国のクーパー

夜の国のクーパー

  • 作者: 伊坂 幸太郎
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2012/05/30
  • メディア: 単行本


ようやく読了。

なるほど。

“私”やこの国の人間・ネコたちに関する仕掛けや、鉄国との関係については、だいたい半分くらい読んだところで気がついた。

アマゾンのレビュアーの評価が低めなのは、わからないでもない。
猫視点からの語りと会話が主体なので、物語の奥行きが浅く感じられ、やや物足りない。設定的に「
オーデュボンの祈り (新潮文庫)」と似ているところはあったが、同作に比べても、引き込む力、ストーリーの巧妙さが弱く感じる。

ではつまらなかったのかと言われると、けっしてそんなことはない。
そんなことはないが、この厚み(ページ数)と、伊坂幸太郎の作品という点で高まってしまう期待値に比較すると、物足りなく感じてしまうのだ。


しかしながら、私はこの本を積極的に読みとくことにした。
この「夜の国のクーパー」を、受け身で読むのではなく、私なりの視点で、私なりに本書の世界に手を伸ばしてみたい。

ということで、次回、この「夜の国のクーパー」の世界に、私なりに触れてみたいと思う。

夜の国のクーパー

夜の国のクーパー

  • 作者: 伊坂 幸太郎
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2012/05/30
  • メディア: 単行本



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夜の国のクーパーを読む① [読書]

このところ、珍しく仕事が忙しかった。

ようやく一段落したので、久しぶりに小説を読み始める。


伊坂幸太郎さんの新作長編、「夜の国のクーパー」だ。
夜の国のクーパー

夜の国のクーパー

  • 作者: 伊坂 幸太郎
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2012/05/30
  • メディア: 単行本


正直、あまり期待できないのではないかと思っている。

というのも、アマゾンの評価をみると、☆は平均3(2012/6/11時点)。

レビューによると、
・設定が頭に入ってこない
・引き込まれない
・面白くない、期待はずれ
・某海外の小説と設定がまるかぶり

などなどなど。

辛口評価が多い。

しかし、私はこの小説を読む。

理由としては、やはり作者買いであることは、大きな動機のひとつだ。伊坂さんの小説の全てが面白いとは、思わない。しかし、よいも悪いも含めて、私は楽しんでいるのだ。

作品の紹介にはこうある。

<この国は戦争に負けたのだそうだ。占領軍の先発隊がやってきて、町の人間はそわそわ、おどおどしている。はるか昔にも鉄国に負けたらしいけれど、戦争に負けるのがどういうことなのか、町の人間は経験がないからわからない。人間より寿命が短いのだから、猫の僕だって当然わからない――。これは猫と戦争と、そして何より、世界の理のおはなし。>

なるほど。

戦争に負けると、どうなるんだろうね?

私達はつい最近、経験したはずなんだけれど、よく分からない。実感がない。


本を手に取ると、思いのほか分厚い。

なるべく内容にふれず(ネタばれしないよう)気をつけながら、感想を書こう。

まだ数十ページほど読んだところだ。

私の感想。


「なんだ、題名にあるクーパーって、猫の名前じゃないんだ」


あらすじを読んで、勝手に物語る猫の名前がクーパーなのかと思っていた。

さて、続きが気になる。


話は始まったばかりなのだ。

夜の国のクーパー

夜の国のクーパー

  • 作者: 伊坂 幸太郎
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2012/05/30
  • メディア: 単行本



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